気になっていた本
昨年3月に発売されたこちらの本。
「世界は贈与でできている」
贈与とは、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する契約」(デジタル大辞泉より)
資本主義(お金を基本とする経済活動)が中心の現在、
にもかかわらず、世界がお金を介さない「贈与でできている」ってどういうこと?
と、気になっていた本をようやく手にしました。
今回はこちらの本のおはなし。
お金では買えないもの
この本では贈与のことを信頼関係や助け合いなど『お金で買うことのできないものおよびその移動』と定義づけています。
与える側が見返りや対価を求める場合は計算可能な「交換」関係となる。
資本主義は交換の関係性で成り立っているけれど、世界の関係性はそれだけで成り立つものではない。
なるほど、これが表紙にある、(贈与によって)資本主義の「すきま」を埋める、ということに繋がるのかしら。
『お金で買えないものは、贈与として僕らのもとにやってくる』
贈与は人を通してやってくる。そして『贈与は必ず返礼が後続する』
決して交換関係ではないので、誰かが誰かへ贈与していく流れは連綿と続いていく。
ここで映画「ペイ・フォワード」の結末がなぜあの展開になったのかが論じられています。
私も「ペイ・フォワード」過去に観たことがあり、
決してハッピーエンドとは言えない「もやっ」とする結末は、物語を良い話で終わらせずに観る側へ疑問や問題を感じさせるためかなぁと思ってました。
この本では贈与の観点から紐解いています。
本来の贈与(=返礼が後続する)を考えると、ペイ・フォワードを「スタート」させた主人公はかつて「贈与された」という元手がなかった。
主人公から先は贈与ではあるものの、主人公の最初の行為は「交換」だったと。
この本での考察は映画を観た時の「もやっ」としていたところが、「そういう見方もあるのか」とちょっと目からうろこでした。
「贈与」という言葉はかたいイメージですが、この本を読んで感じたのは「贈与」とは(人々から譲り受け継がれた)「愛」のことなんだろうなぁと。
人間は必ず大人の手が必要となる「未熟な状態」で生まれてくる。ここから「他者からの贈与」「他者への贈与」が始まる。
現代は資本主義(交換)の世界ではあるけれど、その根底に流れているのは「贈与」ということなんだと知ることができる一冊でした。
おまけ
気になるタイトル、発想が面白いなぁと思いながら手にしましたが、
こちらの本も私は、読みすすめるのが難しい本でした。
なぜかなぁと思いましたが、改めて表紙を見たとき気が付きました。
この本に出てくるキーワードが表紙の上下にみっちり書かれています。
哲学者ウィトゲンシュタインの言葉から始まり、平井堅の歌詞から漫画テルマエ・ロマエまで。
本書の中にキーワード(その引用)が点在しずぎて逆に、筆者の主張が繋がりにくく、全体像がつかめない印象でした。
(哲学者らしい表現というのでしょうか)
文章の表現は人それぞれの個性。
読み手にとって読みやすい、理解しやすい表現というのも双方の相性の一つ。
(私には合わなかった)
読んでいて「う~む」となりましたが、一つでも視点が広がるヒントがあったので手にしてよかったと思ってます。