酔っぱらいの映画
another round=皆んなでもう一杯飲もう!を意味するタイトルがついた
デンマークの作品。
原題は「DRUNK」デンマーク語で酒飲みを意味する言葉がついています。
お酒を飲むのが好きな(そして時々飲まれる)私はとっても気になる映画。
ポスターも主人公が青空の下、歓声の中グビッといっちゃってます
ざっくりあらすじ
高校で歴史を教えている主人公マーティンは中年クライシスの真っ只中。
退屈な授業に生徒は聞く耳を持たず、
保護者からも進学に関わるので授業をなんとかしてくれと苦情を言われ
家庭では夜勤ばかりの妻アニカとすれ違いの日々。
ある日友人ニコライの誕生日に集まった同僚3人の宴席で
「血中アルコール濃度を一定に保つと、仕事の効率が良くなり、想像力がみなぎる」
という理論を証明しよう!と盛り上がり実験を始めます。
朝からこっそりお酒を飲み血中アルコール濃度を0.05%にして授業を始めると
授業はノリノリ、生徒は目をキラキラしてマーティンの話にくいついてくる。
すれ違いが続いた家庭も8年ぶりの家族旅行でアニカとの関係も良くなりそうな展開。
同僚3人も同様に授業に対しての取り組みがガラッと代わり
生徒たちの反応がよくなってきます。
血中アルコール濃度を0.05%でこんなに好調なるなら、
もっと濃度を上げるともっとよくなるんじゃないかと、
4人のアルコール摂取量はどんどん増えていき、
すべて好調に行きそうだったことが、徐々にほころびが現れてくるように。
感想
デンマークは北欧に位置しますが、北欧のシャイで物静かな性質、
日本人とどこか似ているように思えます。
~「血中アルコール濃度を一定に保つと、仕事の効率が良くなり、想像力がみなぎる」
理論で主人公たちはお酒を飲んで絶好調な状態で授業をする~
わたしはお酒が入ると普段見せない陽気さが表にでてくるの方だったので、
新卒で働き初めた当初、上司に冗談まじりに
「ごまいりこはお酒を飲んだほうが元気がいいから、お酒飲んで仕事したらどうだ」
と言われたことが
お酒の力を借りて、不安から解放され、リラックスした状態で
本来の持ち味が引き出されるのでは、という4人の気持ちは、首がもげそうなくらい、よ~くわかる。
けれど、そこを主軸にしないで自制を効かせるのがお酒を飲む大人としての
「嗜み」だとも思う。
だから、話が進み「もっと濃度を上げてみよう」からのラストへ向かう展開は、
観ていて哀しくもあり、そしてそれを乗り越えようと希望がチラッと感じられる
ラストで少しホッとしたり。
(ラストシーンは観る人それぞれの解釈になる描き方をされています)
それでも人生は続くのだけれど
生真面目なマーティンが最初は「今日は飲まない」「帰る」といいつつも、
他の3人に促されて「グビッ」と一杯、
結局明け方まで4人で楽しそうにバカ騒ぎする場面。
わたしも今日はサクッと帰る!と思いつつラストまで残ってしまうことが度々ので、
「あ~わかる~」と思わず共感してしまった
それとマーティンが飲物を促したときに選ぶアニカの飲物。
いつもお水やコーヒーなどお酒ではないものをリクエストしていたアニタが、
マーティンと待ち合わせしたお店で「白ワイン」を注文するシーン。
ここはアニカも苦しんでいる心情が伝わってきて、お酒の映画だけにお酒を表現に上手く使っているなぁと。
映画を観るとその国の文化がみてとれます。
(デンマークではお酒が16歳から飲めるので)
生徒が恒例イベントで酔っ払ってワイワイ騒いでいるシーンから始まり、
マーティンに質問された生徒が「週に50杯以上飲んでる」と答えたり、
さらに、マーティンへ苦情を言うために集まった保護者たちの姿が
椅子に座っている人もいれば、机の上に腰をかけてたり、立ったままの人がいたり
まぁみなさん好きな姿勢で先生に苦情を申し立てていて
各シーン、なかなか日本では見かけない風景だなぁとその自由さにびっくり。
ちなみに、今回観にいって「この映画をそうやって観るんだ!」と納得したのが、
映画が始まったと同時に隣の席で「カシュッ」とひっそりいい音がしたこと。
一人静かに味わいながら、お酒に酔いしれる中年男性の悲哀を観みるのも乙なもの。
(コロナ対策で)少し離れて影しかわからない隣の席の方の
この映画に向かう思いがチラリ伝わって「おぉ!」となりました、
2020年アカデミー賞受賞作品
お酒が好きな方、そうでない方もホロッと人生を楽しめる映画です。
おまけ
映画を見る機会が少ない方ではありますが、
デンマークの作品といえば、私が好きな映画があります。
(と、言っても過去にデンマーク作品この1作品しか見たことないのですが)
2004年と20年近く前の映画です。
みんな少し孤独を抱えていて不器用で、
それでいて相手を気遣う思いやりが感じられて悪い人が出てこない(←ここ大事)
やさしくてほっこりする作品です。
気に入って繰り返しレンタルして観た思い出があります。
久しぶりにまた観たくなってきました。